今年の秋は、9月後半の台風に始まり、10月は寒暖の差が激しくなり、呼吸器症状でなやまれる方が増えています。
冬になると空気も乾燥するため、季節性インフルエンザと新型コロナウイルスの流行は心配の種となります。
米国ではRSウイルス(Respiratory Syncytial virus)による急性呼吸器感染も流行しているようであり、来日インバウンド客を通じ、日本での拡散も危惧されています。
ところで、
内科外来では、相変わらず発熱の患者さんを受け入れ、同時に新型コロナウイルス・オミ株ワクチン、インフルエンザワクチン接種を行っています。
そのほかに一般患者さん達もあふれており、病気は待ってくれないとばかり、次々と心臓や脳、各臓器のがん、急性疾患がみつかります。
高次医療機関でも、これまで後回しにしてきた検査や手術をどんどん再開しているようです。
しかし患者として来られる保健所職員さんの中に、胃潰瘍を発症した方や慢性疲労から体調不良、精神不安におちいった方がいるように、医療にかかわる現場はどこも業務が多忙化し、離職者も増えています。
その結果、スタッフが足りなくなってしまいました。今の医療は、どうしても頑張って残っている者たちの自己犠牲の上に成り立っている側面があります。
ですので旅行割、フェス、ハロウィン、忘年会を楽しむのも良いのですが、複数ウイルスの同時流行を招かないよう、それぞれができる対策をお願いしたく思っています。
再び医療現場が混乱することのないよう、切に願っております。。
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さて、
依然減少傾向にない新型コロナ感染後遺症患者さんへの治療についてです。
現状として、西洋医学では明確な治療の方法がありませんので、対症療法がおこなわれています。
一方東洋医学は、物事をピンポイントでとらえる現代的な感覚ではなく、総体的に判断していく性質のため、治療の目指すところがある程度はっきりしています。
それは、体内で乱れた「陰と陽」「寒と熱」などの要素を調和させることです。
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まず「陰」とは、手足が寒々、精神的な抑うつなど「物静かで、活力の低下した様子」のことであり、
「陽」とは、発熱、気分高揚など「激しく、活力の増している様子」のことを意味します。
人体において、この陰陽および寒熱が調和していることは健康、逆に逸脱していることは病む状態として、身体と精神を判断します。
もし大きく乱れているようであれば、漢方薬を駆使し、それらを整えることを目指します。
これを”曖昧”と思うなかれ、この発想で案外、新型コロナ感染後遺症も一定の改善に至るのです。
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ただ「陰陽」というものには、いくつかの要点があります。
(1)陰証は潜在的で分かりにくい
陽証は激しく目立つ状態であるため、わかりやすいものです。
しかし陰証はきわめて潜在的なので、軽く見えてしまい、見逃されがちです。
たとえば、熱の出ない寒さだけの風邪や、病態が急変する前の何気ない様子です。
病気を長引かせ悪くさせないように、まわりが気付いてあげないといけません。病院では、対面診療がキモとなります。オンライン診療では難しい点です。
(2)陰と陽(寒と熱)が混ざっている
陰と陽は体では「陰の冷えた部分が3割:陽の暖かい部分が7割」とか「陽が大部分だが、一部は陰」、「陰の中に陽が散在」など状態がさまざまです。そしてその様子は、連日変化します。
そんな場合の治療は、陰と陽があらかじめ配慮されているお薬で様子をみたり、煎じ薬で、温薬の量を増やしたり、寒薬を減らしたり、もろもろ調節します。
(3)陰証がきわまって、陽証のようにみえる
冷えた陰証のはずなのに、そうみえない‥陰証に強くかたよっているのに、陽証のように表出してくる場合があります。やはり体というのはアナログ的です。
たとえば「冷え症なのに、足が熱い」など経験したことはないでしょうか。
これは本質的に体の奥底は冷えているのに、体の別の部分では熱を発している(ようにみえる)というものです。
このような場合も、とりあえず中心症状から治療を始め様子を見ます。
(4)陰と陽(寒と熱)は、一定ではない
陰と陽は決して一定ではなく、変化します。
たとえば、もともと元気な陽証の体質であった方が、手術や強いお薬、長患いによって、陰証体質に変わってしまうことなどはまま見られます。
また明らかな出来事がなくても、加齢やストレス、過労、生活習慣などが関係し、いつの間にか状態が変わってしまうこともあります。2年半にわたるコロナ禍もその一端を担っています。
そのため「この方は、こんな人(体質)だから‥」と割り切らないで、その時々の証を見て熟慮しています。
新型コロナ感染後遺症では、このようなことを意識しながら、調和のとれた体を目指す治療を行っています。