熱お血は『血の塊が滞り、熱性成分がうっ積している状況』です。
そして、これの充満度合いによって、「陽実証(ようじっしょう)」と「陽虚証(ようきょしょう)」に分けられます。
「陽実証」は、病邪気が亢進している非常に強い病態をいい、一方「陽虚証」は病邪気の程度がそれほど強くない病態をいいます。
前回までに紹介した桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は陽実証に用いるお薬ですが、
今回の加味逍遙散(かみしょうようさん)は陽虚証に用いる、そんな位置付けです。
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ちなみに加味逍遙散の構成は、
〇気(き)を調整する生薬(気剤)に
柴胡(さいこ)が、疎肝解うつ(そかんげうつ)作用を
山梔子(さんしし)・薄荷(はっか)が理気(りき)作用を
甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)が補気(ほき)作用を担っています。
そして、
◎血(けつ)を調整する生薬(血剤)には
牡丹皮(ぼたんぴ)・当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)を
朮(じゅつ)・茯苓(ぶくりょう)を、あてています。
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このお薬の特徴といえば、気剤が十分含まれていることです。
主役の「柴胡」は、イライラ、精神神経症状を改善させることができます。これを「疎肝解うつ」といいます。
そして脇役の気剤として、
気を体内にめぐらす「理気」の生薬と、
元気を作り出す「補気」の生薬が、
協力しあい自律神経を調整します。
これに「血」と「水」を調整させる生薬が含まれて、まるで当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)のような駆お血・補血剤の一面もあります。
つまり加味逍遙散は、
お血を改善ながら、イライラを晴らす、神経過敏を落ち着かせる・・・
これが更年期障害治療に用いられている理由なのです。