熱お血は『血の塊が滞り、熱性成分がうっ積している状況』です。
一方、冷えお血は『熱分や血水が足りなくて停滞し、体が冷えびえしている状況』です。
冷えを自覚している方は、慢性的な運動不足を背景に代謝も低下しているので、むくみやすくなります。
そのような陰証の方への基本薬は、「当帰芍薬散(とうきしゃくやさん)」です。
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ところで前回の「加味逍遙散(かみしょうようさん)は、イライラを鎮めるお薬でした。特徴は、
・主役の「柴胡(さいこ)」が、たかぶった精神症状を改善させる
・「血」「水」を調整させる生薬が含まれ、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)のような駆お血・補血の一面も備えている
にありました。
ただ基本的に、体にカッと熱さがあるような「陽証体質」の方へのお薬といえます。
では体が冷えている陰証体質の方にはどうすれば良いのでしょう。
そういう方に加味逍遙散は適当ではありません。
なぜなら主役の『柴胡(さいこ)』に体を冷やす性質があるため、陰証の方へ負の影響が無視できないからです。
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そこで「芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)」があります。これは、
〇気(き)を調整する生薬(気剤)に
気を体内にめぐらす「理気」の
香附子(こうぶし)・烏薬(うやく)・陳皮(ちんぴ)・桂皮(けいひ)・乾姜(かんきょう)、
元気を作り出す「補気」の
甘草(かんぞう)・大棗(たいそう)
が含まれています。
そして、
◎血(けつ)を調整する生薬(血剤)には
牡丹皮(ぼたんぴ)・益母草(やくもそう)と
当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・地黄(じおう)が含まれます。
また、
朮(じゅつ)・茯苓(ぶくりょう)が、あてられています。
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芎帰調血飲は、加味逍遙散と同様、気剤が精神症状を改善させます。ただ「柴胡」を除き、他の気剤をあてているため、体を冷やすことがありません。
要は「陽証向きの加味逍遙散、陰証向きの芎帰調血飲」といえ、まさに表裏の関係です。
もちろん「血」と「水」を調整させる生薬が、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の駆お血・補血作用を想起させます。
むしろ地黄を含む分、四物湯(しもつとう)に近く、より冷えお血の改善に至らせます。
つまり芎帰調血飲は「柴胡以外の気剤+当帰芍薬散」であり、
お血を改善ながら、イライラを晴らす、神経過敏を落ち着かせる・・・
すなわち“冷え症体質の”更年期障害治療に用いることができる、これが特徴といえるのです。