冷えお血の基本薬は「四物湯(しもつとう)」であり、それにはたくさんの派生薬があることを説明しました。
中でも「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は、婦人科を中心に実に頻用されているお薬です。
その当帰芍薬散といえば、
◎血(けつ)を調整する生薬(血剤)に
当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・芍薬(しゃくやく)が、
●水(すい)を調整する生薬(利水剤)に
茯苓(ぶくりょう)・沢潟(たくさしゃ)・朮(じゅつ)が、
含まれていました。
この薬の特徴は、
①四物湯(しもつとう)という冷え症基本薬から発展したお薬であること、以外に
②五苓散(ごれいさん)というむくみの基本薬が含まれていることです。
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今回は、その当帰芍薬散と表裏”の関係にある「温経湯(うんけいとう)」について説明します。
温経湯の構成生薬は、
◎血(けつ)を調整する生薬(血剤)として、
当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・芍薬(しゃくやく)と、牡丹皮(ぼたんぴ)が、
●水(すい)を調整する生薬に
人参(にんじん)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、麦門冬(ばくもんどう)、阿膠(あきょう)が、
〇気(き)を調整する生薬(気剤)に
桂皮(けいひ)、半夏(はんげ)が用いられています。
両薬とも四物湯から派生しているため、血のめぐりを改善させる作用は共通です。
ただ当帰芍薬散には「むくみを除く」ための生薬が、温経湯には「潤いをつける」ための生薬が足されており、対症が”真逆”にあることが要です。
すなわち臨床的に、水毒がからむ頭痛、肩こり、めまい、腫れぼったさのある人、足に浮腫のある人、これが当帰芍薬散に最適です。
一方で唇が渇いてむけやすい、手掌が乾燥して火照る人、体がカサカサのしている人、これには温経湯が最適です。
このように病状や状況によってきっちり使い分けられることが、西洋薬にはない漢方薬の特徴といえるのです。