クリニックのご案内診療のご案内フォトギャラリーHOME

2024年10月8日 22:48

112. 感冒・鼻炎・咳に漢方薬(麦門冬湯)

 先日千葉西総合病院で、“海外で発生し、国内に持ち込まれた新興感染を想定した対応についての研修会”があり、松戸市保健所、近隣病院、高齢者施設に加え、当院も参加させていただきました。

 その意見交換の場で、どこの施設でも今、新型コロナ、インフルエンザ、ヘルパンギーナ、マイコプラズマなどの感染が増えていることをうかがいました。

症状はやはり、”発熱、のど痛、長引く咳”のようです。   

 ただ咳については心配があり、今年もどうやら咳止め薬が不足し始めた気配です。

 そのような事情も考慮し、今回感染後半期からみられる咳の漢方治療薬「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」についてお話しいたします。

 ・・・

 

 さて、風邪後半期の咳といえば特徴は、

  •  乾燥している
  •  なかなかとれない粘った痰を伴う
  •  喉が引っかかる
  •  夜、布団の中で出やすい

 

 というものです。そんなときに有効な漢方薬のひとつが麦門冬湯となります。

 

 麦門冬湯は、

  麦門冬

  半夏(はんげ)

  粳米(こうべい)

  大棗(たいそう)

  人参(にんじん)

  甘草(かんぞう)

の6つの生薬で構成されています。

 

 以前、風邪の発熱極期に「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」が良いことをお話ししましたが、

これは、高熱に付随する脱水に「枯れ苗を再起させるよう体に水分を与え、うるおす」特徴を有していました。

この「うるおす」ことを受け継いで派生した薬が麦門冬湯となります。

 

 つまり、

◎白虎加人参湯から、

(人参  糠米  甘草)+ 石膏、知母

 

→竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)を経て・・、

(人参 糠米 甘草)+ 石膏、麦門冬、半夏、竹葉

 

→◎麦門冬湯に、

(人参 糠米 甘草)+ 麦門冬、半夏、大棗

と共通生薬を残し、引き継がれています。

 

 これにより麦門冬湯は、風邪後半期の

1.乾燥した咳や粘痰のある肺をうるおす

(鎮咳、去痰作用)

2.口の渇きや寝汗を治す

(滋陰、清熱作用)

 ことが可能となります。

 ・・・

 麦門冬湯は、中国の古医書『金匱要略(きんきようりゃく)』に「大逆上氣、咽喉不利、逆を止め、氣を下す者は、麥門冬湯之を主る(つかさどる)」と紹介されており、

 

大逆上気(たいぎゃくじょうき)とは、

・顔が赤くなるほど咳き込むこと

咽喉不利(いんこうふり)とは、

・のどが炎症によって、いがらっぽくなること

 なので、麦門冬湯はそれらを止めることができる、と述べられているわけです。

 

 明治の漢方医 浅田宗伯(あさだそうはく)は、

著書『勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)』の中で、

「此の方は・・・肺痿、咳唾、涎沫止まず、咽燥いて渇する者に用ふるが的治なり」と表現しています。

 

また著書「橘窓書影(きっそうしょえい)」にも、

「37-38歳の女性に投与したその経過」を実例として残しています。

Copyright © Wakaba Family Tokiwadaira Medical Clinic. All rights reserved.  無断転載を禁じます.