漢方では独特な診察法があります。それが手の脈をみる「脈診(みゃくしん)」、舌をみる「舌診(ぜっしん)」、お腹の状態をみる「腹診(ふくしん)」です。これらの方法を用いて、患者さんの体の状態をみています。
・お腹の情報と漢方薬
お腹にはたくさんの情報があり、実際触れて次のようなことをみています。
① お腹全体の力強さや、うるおいの様子
② 腹筋の張り具合
③ お腹の動悸
④ 下腹の力強さ
⑤ 骨盤内の血液のたまり具合
⑥ 胃腸にたまったガスや水の状態
⑦ 胸元の抵抗感
⑧ みぞおちの抵抗感
これらは、病態の判断や、お薬を選ぶときの根拠となります。
たとえば「①お腹全体の力強さ」は、使うお薬が体に合うかどうかを判断するときの目安になります。つまりお腹の力が強い方には、即効性のある強いお薬が使えます。でも弱々しい方には、使うことができません。
「⑤骨盤内の血液のたまり具合」は、女性の悩みや、長患いを解決するときの指標になります。
骨盤は、立って生活している人間にとって、普段からおおきな受け皿のように血液がたまりやすいところです。長く病気を患っている方や、血のめぐりの悪い方は、そこに充血が目立つようになります。
また女性は生理によって骨盤内の血液量が変化するため、血液のたまり具合をみることが大切になります。
・お腹の見方
一般的な西洋医学でもお腹を診察しますが、それはおもに内臓をみるためのものです。体の表面から内臓に触れるため、患者さんにはまずあおむけに寝てもらい、両膝を三角に立ててもらいます。こうするとお腹の筋肉がゆるみ、診察しやすくなります。
一方漢方では、体内からお腹に伝わる反射をみています。そのために自然な姿勢がちょうどよく、患者さんには両足をまっすぐ伸ばし、あおむけに寝てもらいます。
太っている、やせているといった見た目より、問診ではわからない体質が分かることが大切です。もちろん漢方薬の効果の確認も、お腹の変化を参考にしています。
診察にワンピースやボディスーツ、着物でおこしになる方がいますが、以上の理由から、漢方の診療には簡単にお腹が出せるような服装が望ましいといえます。
(写真は、男性にモデルをしていただいています。
実際の診察では、女性ナースが付き添っています。)