・舌を診る
漢方では、舌を診る診察法があります。
舌は、西洋医学では、味覚や物を飲みこむはたらきが重視されますが、東洋医学では、体質や体調をあらわす臓器として尊重されています。
皆さんは舌の形を気にすることがありますか‥
実は舌の形は、人さまざまです。大きい舌や小さい舌、長く伸びた舌や短い舌、さらに真っすぐ縦に伸びる舌もあれば、片方に曲がっているものもあります。
例えば、大きな舌についてお話をしましょう。
少しむくんで、舌の縁に歯形がつきデコボコした状態を歯痕(しこん 左図)といいます。
そしてもっとむくんで、ボテッと大きくなった状態を胖大(はんだい 右図)といいます。
両者は相互に移行するので、双方の特徴が重なっている場合もあり、体内に「水」をため込んでいることが分かります。
そこでそんな舌を持つ方々にお話をうかがうと、やはり体に「水」をためやすい生活をされています。しかし「生活には気をつけています。食事もたいして食べていません」とおっしゃる方もいて、気が付かれていない場合もあります。
・体に水がたまる理由と弊害
体に「水」をためやすい生活とは、このようなものです。
・清潔なお肌のため、汗をかかないような生活
・食べ過ぎ、飲み過ぎの食生活
つまり涼しいところにいて、動かず汗をかかなければ、体から「水」がはけませんし、いつもたくさん食べていれば、飲食に由来する「水」がたまってしまいます。これは、「水」とは『透明な液体ばかりではなく、粘っこい体液(皮下脂肪)も含まれる』と考えると納得できます。
日本は四方、海に囲まれ、気候も多湿であるため、私たち日本人はもともと「水」の影響を受けやすいといわれています。
食事ではお米を主食とし、米にはモチモチ潤いたっぷりの水分と甘さが感じられます。
またジュースや缶コーヒー、アイスやお菓子は、簡単にコンビニや自動販売機で手に入ります。
ビタミン豊富な果物も、高度な品種改良のおかげで甘さが増しています。甘味成分は体に「水」をため込む性質があります。
生活では「熱中症になるといけないので、なるべく空調を効かせましょう。水分もたくさんとりましょう‥」と盛んであり、ますます汗をかきにくく、「水」が蓄積しやすくなっています。
これらを「水毒」といいますが、冷え症、首筋のこり(肩こり・頭痛)、めまい、胃腸不良につながります。
・病院受診よりも大切な意識の改革
そんな方々が病院に来られると、「水」をさばく利水(りすい)の漢方薬を処方しますが、もっと食事や生活スタイルに意識をはらえば治るのに、と思わされることもしばしばです。
病気ができあがるとお薬での治療も必要になりますが、意識の改革だけでも、体調は良くなります。結局、体は「食事」と「生活習慣」により作りあげられています。
さて、自身が「水毒」にあるのか、食事や生活習慣を見直すべきなのか‥、それを判断するために、ぜひ舌を見てみましょう。
毎日様子を観察していると、体調の変化によって、舌も変化していくことに気がつかされます。