ぽっと頬が赤くなる、ほてり
すこし照れた表情であれば、かわいらしい感じがします。
でも当院に来られる方のお悩みレベルは、それとは異なります
西洋医学では、ホットフラッシュとして甲状腺や更年期の検査がなされます。そこに異常が見つかれば、そのお薬が試されます。効果のある方は、もちろんそれで十分なのですが、効果のはっきりしない方には、東洋医学があります。
漢方では、ほてりの度合いをみながら、中心となる生薬を選んで対応します。
ところで私の講演ではこれを、やかんをイメージしながら説明しています。
まず、スチール製のやかんに水を入れ、お湯をわかす様子を思い浮かべます。そのやかんの側面を顔の頬に、ふたのあたりをおでこに見立てます。
(1)やかんが暖かくなり始めた段階は
頬がピンク色にそまる軽いほてりと一緒です。
このタイミングでは桂皮という生薬を用います。桂枝湯という風邪の漢方薬がありますが、そこに含まれる桂皮を増やした桂枝加桂湯や、甘草という生薬をあわせた桂枝甘草湯などは、試してみる価値があります。
(2)少しやかんが熱くなってきた段階は
頬が紅潮しているほてりと同じです。
この状況では、熱だけではなく、水(お湯)も災いとなるので「瘀水(おすい)」と表現できます。これを除くため、茯苓という利水の生薬を用います。甘草と合わせた茯苓甘草湯が用意されています。
(3)さらにやかんに熱が加わった段階は
顔全体が真っ赤になるのぼせと同じです。
「瘀熱(おねつ)」とも表現できるため、熱を冷ますため黄連、大黄という生薬を用います。
たとえば、三黄瀉心湯、大黄甘草湯などがあります。
(4)お湯が沸騰し、ふたや口から湯気が吹き上げる段階は
ゆでだこ状、異常な汗もタラタラしたたります。
石膏や黄連を含む、白虎湯や石膏黄連甘草湯を投与します。
この場合、石膏の量を加減することがキーとなります。
それからもう一つ、熱とは逆のお話もあります。
ほてりは、漢字で「火照り」と書き、多くは熱の病態です。でも熱ばかりではなく、冷えが原因になることもあるのです。
つまり、体の芯が冷えたときに見られる自律神経失調が身体のバランスをくるわせる、まるでお風呂を沸かしたときの、湯船の上の方は熱いのに底の方は冷たい、そんな状況がおこるのです。
一つの体の中で熱と寒が180度ひっくり返って共存する...、それだけ自律神経は複雑であり、今の西洋医学では定義できないものといえます。
そのようなとき、漢方では
(5)当帰、地黄を含む補血剤(四物湯類)から用います。これで湯船をかき混ぜるときと同じ作用が期待できるのです。
まとめますと、
・熱のほてりの治療には、段階的な戦略がある
・ほてりを治すために、冷え症から治すこともある
その差異を判断するため、脈と舌の観察が大切となります。この緻密さが西洋医学には見られない、東洋医学の醍醐味といえるのです。