・口がくさい
・口が苦くて、まるで体の中に毒がある感じがする
これは、当院に相談に訪れた女性の悩みです。
漢方では、食べた物の匂いを執拗に感じることを「食臭(しょくしゅう)」と言います。
胃のあたりが痞え(つかえ)、食べた物のにおいが鼻につき、オエっとげっぷ、
これは確かに生活に支障が出るほどの悩みといえます。
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西洋医学では、胃酸を抑える薬か吐き気止めが処方されるかもしれません。胃カメラ検査もなされるでしょうが、胃の中はたいてい何ともありません。他の検査でも原因はみつからないでしょう。
それどころか「胃の中にピロリ菌がいるので、除菌をしておきましょう」と話がすり替わってしまうこともあります。
もちろんピロリ菌がいなくなっても、口のくさみは残るので解決に至りません。見込みが立ちにくいと、抗うつ剤が処方されることもあります。
それで効果をみる場合もあるので、その方はそれで良いのですが、ない方の場合は見込みが立ちません。
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その場合は、東洋医学を活用すると良いでしょう。
そこで、生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)。
これは半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)から派生したお薬で(半夏瀉心湯+乾生姜)、げっぷの治療に効くことを前回お話しました。
実はこの生姜瀉心湯が、食臭の治療にも用いられます。もちろん煎じ薬です。
約2000年前の中国医書『傷寒論(しょうかんろん)』に、「お腹にたまった物が熱を発し、口の臭みとげっぷ、そして胸の不快感がもたらされたときは、生姜瀉心湯を使うべし」と、使用の目安が書かれています。
慢性的にお腹に痞えのある方や、ゴロゴロ腸が鳴るよう方であれば最適です。実際先の女性も2週間内に、見事に良くなってしまいました。
西洋医学全盛の現代ですが、このように意外性のある治療ができるのが東洋医学なのです。