2021年11月現在、わが国ではコロナ流行第5波が落ち着き見せていますが、既感染者がかかえる後遺症については、解決法が未知のままです。
コロナ感染後遺症には
・倦怠感 (だるさ)
・遷延する咳、呼吸苦/息切れ
・嗅覚/味覚障害
のほかに、微熱、筋肉痛/関節痛、しびれ、胃腸症状、脱毛、頭痛、不眠、抑うつ、記憶障害などが報告されています。
これまで感染者は国内では170万人、世界では2億5000万人おり、その中から後遺症の報告がされています。
新型コロナウイルスの懸念される変異株には、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ株、そして南アフリカなどからみつかった新たなオミクロン株があり、いずれも新型ウイルスであるがゆえに治療法が確立されておらず、世界の医療・研究機関で模索しています。
当然、感染後遺症について悩んでおられる方も多く、当院では、西洋医学に東洋医学を併用する治療法を選択しています。
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まず倦怠感(だるさ)への第一選択漢方薬は、
「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」です。別名を「医王湯(いおうとう)」といい、漢方薬の王様とも言われています。
このお薬は、中国金(きん)の時代の医家 李東垣(りとうえん)によって1247年に『内外傷弁惑論(ないがいしょうべんわくろん)』および1249年に『脾胃論(ひいろん)』という医書に記されました。
その後中国明(みん)の時代に、医家 龔廷賢(きょうていけん)が1587年の医書『万病回春(まんびょうかいしゅん)』に「過労、食事の不摂生から疲労倦怠して体力を落とし、発熱するもの、頭痛、悪寒、口渇、異常発汗があり、痰があっても出せない弱いものを治す」お薬として、補中益気湯を紹介しました。
わが国では、江戸時代の医家 津田玄仙(つだげんせん)が、1793年 口訣(くけつ)医方集『療治経験筆記(りょうじけいけんひっき)』の中で、補中益気湯は、
・手足に倦怠感 (だるさ)を感じるもの
・言葉や目に力のないもの
・食べ物の味がしないもの
・脈が虚弱で元気がなく、お腹に動悸のするもの
に用いるべし、とのべています。
なかでも手足の倦怠感は「倦怠とは手足の落ちるようにかったるく、力なきを云ふ。これは本方の運用第一の目的とすべきもので、肝要中の肝要である」と使用の要点を記しました。
以来補中益気湯は、”疲労病への強壮剤”として、結核や慢性感染虚弱者への治療に用いられるようになっています。