東洋医学では婦人科疾患のことを「血の道症」といいます。
「血」とは「ち」のことですが、「けつ」と読みます。
血は、現代では「血液」や「血管」のことですが、東洋医学では“人体を支えるエネルギー(のようなもの)”を指します。
東洋医学ではまだ血管の存在を知らなかった頃から、気血(きけつ)が全身をめぐる「経脈(けいみゃく)」に関わっていると考えられていました。
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ところで、「血」にゆがみが生じることを「お血(おけつ)」といいます。
「気」は体の”陰陽寒熱”のバランスを整えます。しかし「血」が滞り、「気」のめぐりが阻害されると、身体のバランスは乱れます。結果として慢性的なお血は病気を招きます。
特に女性は性成熟期や更年期の間、体内の「血」の在り方が劇的に変わるため、身体にもたらされる影響が大きくなります。そのため治療を必要とします。
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複雑な点は、お血には、”分かりやすいもの”と”分かりにくいもの”があることです。
分かりやすいものは、出血や血管に関連するものです。
(1)出血
(2)血腫:うちみ、ねんざ、手術の後遺症、痔
(3)うっ血、血管拡張:静脈瘤、動脈瘤、黒ずみ
(4)女性の病気:月経困難症、更年期障害、不妊症
一方で分かりにくいものは、いつの間にかこっそり潜みこみ、気がつきにくいものです。
(5)慢性の痛みやしびれ
(6)皮膚病
(7)経過の長いうつ病
(8)冷え症
(9)頑固な便秘
(10)難治性疾患
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治療は「お血」の内在を意識するところから始まります。
治療の薬を「駆(く)お血薬」といいますが、なかでも「① 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」と「② 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は、はじめに考慮されるものです。
① 桂枝茯苓丸は”陽証”、つまり熱性の、
② 当帰芍薬散は”陰証”、つまり寒性の体質の方にもちいます。
まずはこれらを使ってみて病態に変化をみるようなら、たとえ分かりにくくても、お血の内在が示唆されます。
もし何かの疾患で、治療してもいまいち様子が改善してこないようなら、駆お血薬を重ねてみるのも手でしょう。