前回まで、
健康体を正円形(〇)に例えるなら、病気のゆがみ方には「円から外側にはみ出すようなタイプ」と「内側にへこむようなタイプ」とがあり、
『突出型のゆがみ』は、モノが過剰になっている様子のこと、
『へこみ型のゆがみ』は、モノが足りなくなっていること、とお話をしました。
ところでお血の視点で『突出型のゆがみ』を考えると、モノとは熱や血のイメージで、
この場合の突出とは、熱が過剰にうっ積している状況、血の塊がたまり滞っている状況をイメージします。
その際の症状は
・のぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)
・異常発汗
・動悸、めまい
・イライラ、神経過敏、うつ
・過多月経
などが該当します。
一方 『へこみ型のゆがみ』のへこみとは、熱分が欠け冷えびえしている状況、血の足りない状況をイメージします。
その際の症状は、
・冷え症
・お腹の違和感や痛み
・頭痛、肩こり、腰痛、足の痛み
・倦怠感、抑うつ
・過長月経、過少月経
などが該当します。
前者を「熱お血」、後者を「冷えお血」と考えることもあります。
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熱お血へ用いる漢方薬を「寒性の薬方」といいます。
これは熱が過剰でゆがんだ体調を、冷えの方に修正し、正円形(〇)に近づけるものです。
標準的な寒性薬といえば「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」があげられます。これは以下5つの生薬で構成されています。
◎血(けつ)を調整する生薬(血剤)に
牡丹皮(ぼたんぴ)・桃仁(とうにん)・芍薬(しゃくやく)
〇気(き)を調整する生薬(気剤)に
桂枝(けいし)・茯苓(ぶくりょう)
●水(すい)を調整する生薬(利水剤)に
茯苓(ぶくりょう)が、あてられています。
このお薬の特徴は、①生薬の数が少なく他の漢方薬を併用しやすいこと、②甘草(かんぞう)を含まないため、むくみなどの副作用が起こりにくいこと、です。
お血が考えられる諸症状にまずお試し感覚で投与できる安心感もあり、臨床の場で大変重宝されているのが桂枝茯苓丸といえます。