冷えお血とは『熱分や血水が足りなくて停滞し、体が冷えびえしている状況』のことをいいます。
・・・
冷えお血治療の中心となる基本薬は「四物湯(しもつとう)」です。
構成生薬の
・当帰(とうき)が、血を作る作用
・地黄(じおう)が、血をうるおす作用
・芍薬(しゃくやく)が、血を治める作用
・川芎(せんきゅう)が、血中の気を巡らす行気の作用
を担っています。
これらのはたらきより、月経(お血)にまつわる神経症状や貧血を改善させる効能が期待でき、”女性の聖薬”といわれています。
また血行不良を改めるため、冷え症治療の肝(きも)とも考えられています。
明治の名医 浅田宗伯(あさだそうはく)が『この方は血道を滑らかにする手段なり』というほど、大切なお薬であるがゆえ、四物湯を含んだ漢方薬がたくさんあります。
たとえば、
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
温経湯(うんけいとう)
芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
八珍湯(はっちんとう)
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)
荆芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
大防風湯(だいぼうふうとう)
疎経活血湯(そけいかっけつとう)
芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)
温清飲(うんせいいん)
当帰飲子(とうきいんし)
七物降下湯(しちもつこうかとう)
連珠飲(れんじゅいん)
痿證方(いしょうほう)
などの面々。
これらは、四物湯にお血を改善させ、そのほか特有の症状や病態を解決させるための生薬がプラスされ個性を発揮しています。
いづれも病虚弱、寒証に重宝される薬ですが、
一方弱点もあり、貧血がひどく紫色の唇を呈しているような方や胃腸が弱くすぐに下痢をしてしまう方、つまり超虚弱者には用いることができません。
それは、当帰や川芎、地黄が、胃もたれをひきおこし、食欲をおとしめてしまうからです。
そのような方々には、胃腸力をアップさせる人参(にんじん)を含むお薬との併用により治療をすすめていくことになるのです。