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2015年10月23日 22:28

4. 人体の「表」と「裏」

3)表裏

漢方治療を行う上で必要となる、三つ目のものさしに「表」と「裏」があります。

漢方では、人の体を筒に見立て、そのオモテとウラの面を分けて考えます。昔の人は、細かい人体構造を知らなかったので、頭~体~足までの皮膚表面を「表(ひょう)」、内臓とくに胃腸のことを「裏(り)」として、おおざっぱに考えていました。

 

さて漢方ではこんな病態生理を考えています。

『外界の"ばい菌"は人体に触れると、まず体の表面に作用する。そして次第に、裏(胃腸)に入りこんでいく・・』

 

体の表面で生じる症状は、寒気、発熱、頭痛・首こり、節々の痛みであり、これを表証(ひょうしょう)といいます。

そして病気が長引くと、次第にお腹の痛みや張り、下利・便秘が生じます。これを裏証(りしょう)といいます。

 

それぞれの証には、それぞれお薬が用意されています。例えば表証があるとき、体力のある実証の方では葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)が用いられます。一方体力のない虚証の方には、桂枝湯(けいしとう)が用いられます。これらには発汗作用があるため、"ばい菌"を汗といっしょに、はじき飛ばすことができます。

 

もしもそれで治療がうまくいかなかったとき、"ばい菌"は体の奥底まで入りこむため、裏証が生じます。そのとき実証の方の場合、便秘によってお腹が固く張るため、承気湯(じょうきとう)というお薬が用いられます。これには大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)、厚朴(こうぼく)、枳実(きじつ)という生薬が含まれているため、排泄を通して、"ばい菌"を追い出すことができます。

 

しかし虚証の方の場合、"ばい菌"の作用によって、胃腸の働きが低下してしまうため、下痢や力のないお腹の張りが生じます。そうなると"ばい菌"に抵抗する力も落ちてしまいます。そこで胃腸を温めて機能を補う人参(にんじん)、乾姜(かんきょう)、附子(ぶし)などの生薬が必要になってきます。それらを含むお薬には、人参湯(にんじんとう)、真武湯(しんぶとう)、四逆湯(しぎゃくとう)があります。

 

胃腸は今では、人体最大の免疫臓器と考えられていますが、裏(胃腸)のはたらきを上げることは、"ばい菌"の作用を封じこめることになるのです。

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