頭のモヤモヤは、経験のある方でないと分かりにくいものです。
悩みの深遠な方では、理解されにくいこの混沌とした症状に顔をしかめています。そして外来では、こう表現されます。
・頭の中が、ゴチャゴチャしている
・頭に、もやっと霞がかかっている
・おでこのあたりが、ソワソワせわしない
たいていの方は脳外科や神経内科で、脳の検査を済ませています。更年期かもしれないと、男性であれば泌尿器科で、女性であれば婦人科で、治療をうけている方もいます。また精神科や心療内科で、抗うつ剤が処方されている方もいます。
各科対応で解決されている場合は、問題はありません。しかし、"カギとカギ穴"のようにすっきり収まらないこともあり、漢方を求め来院されることもしばしばです。
これは画像検査で白黒はっきりするものではなく、脳のはたらきが関わっているようです。もしかしたら、脳の細胞どうしをつなぐ神経伝達物質、脳内ホルモンの作用にトラブルがあるのかもしれません。
ただそれが脳のどこで、どのように変化しているのか、については分かっていません。そのため緊急的な課題でなければ、様子を見ましょうと片付けられてしまいます。
印象に残った西洋医学の病名は、
自閉症スペクトラム
(アスペルガー症候群、注意欠如多動性障害)
統合失調症、うつ病
転換性障害、身体表現性障害
などでした。
これに対して漢方では、柴胡(さいこ)という生薬を用いると、悶々とした感覚が整理されるようです。それについては、拙著「うつに効く!こころの病に漢方薬(現代書林刊)」の中で紹介をしています。そこではお薬によって、
「頭の中のゴチャゴチャした気分が治まり、血がのぼらず、物事に対処できた」
「柴胡の量の加減によって、頭の霞が晴れて、スイッチが入った」
と変化をみたケースをあげています。
さらに、釣藤鈎(ちょうとうこう)という生薬を重ね、
「物事を順序だてて説明できるように変わってきた」
「見えるものが平面的なイメージだったが、立体的に解釈できるようになった」
「幻視が減った」
とお話しをいただいくこともあり、興味深いところといえます。生薬は、産地によって質が異なり、得られる効果に差をみるため、煎じ漢方では細かな使いわけが大切となります。
もちろん「100%治ります」と、過大な表現はできないのですが、漢方の工夫によって治療のきっかけがつかめれば何より、と思っています。